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編集長コラム

変わるべきなのは自分自身なのだ | 農業経営者 10月号 |  (1996/10/01)

【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
東北地方の野菜産地の20代の青年と話していた。彼は嘆いた。

「個人出荷に走る人も共選で品質を上げることに熱心でない人も、自分のことしか考えていない」

自分の農協の集荷管理体制では能力のある農家から組合を離れていってしまう。それが産地としての評価を下げることにつながっているのだけど、農協はその対策が打てないまま手をこまねいている。そして組合員のほとんどは今までと違うことをすることに消極的だという。

彼は、いかにも誠実さを感じさせる青年だった。その人柄も含めて農協や行政の期待を背負わされているような人だ。
そんな彼にその場に同席した人が話かけた。

「それで君はどうするつもりなんだ。ただぼやいているだけか。それで村の中で周りの人達より上手な経営ができる篤農家でいることだけで満足なのか。それでは君自身が世の中に取り残されてしまうぞ。自分から働きかけるのか、それとも世の中の変化に翻弄されていくのか」

その人は、北海道の野菜生産者で外食業と提携している経営者だ。その栽培技術や経営能力を伝え聞いて外食業者が訪ねてきて契約出荷が始まったという人だ。彼はさらに話を続けた。

「どこにもしょうもない奴はいるもんさ。俺の村にこんな奴もいたよ。誰も奴のことなんか信用しちゃいないんだが。でもそんな奴に限って人のいうことなんか屁とも思わないし、口ばっかりは一人前のゴウツクだから手に追えなかった。だけど、結局は自滅していったな。最初は威勢のよいことをいってある流通と提携したんだが、そこは農協の共選みたいに甘くはない。作物って正直だし、目先の損得だけで動いていたんじゃ取引先の助けも得られない。単に売値が高いなんて程度で新しい売先を求めたのでは相手に見抜かれるのは時間の問題だったのだな。世間はそんなこと許してはくれない。そんな奴のいうこと真に受けて取り引きした業者も馬鹿だよな。奴の爺さんはビートの台車に石を入れて秤にかけて量目をごまかすような人だったそうで血は争えない。そんな奴に限って、流通業者が生産者の都合を無視するなんて人のせいにするんだ。だけどな、奴の手前勝手さと、より高い位置を求めようとはせず身を寄せ合って誰かを悪者にしている方が楽だと思っている村の根性とは、同じものの裏表なんだということを覚えておけよ。皆がどうこう、誰がどうこうじゃないんだ。自分がどうするかなんだよ。そうしない限り、いつまでたっても同じボヤキを吐いてることになるよ。農協の管理体制がおかしければ君が直せばよい。組織が大きければそのメリットもある。それができないなら自分でやればよいだけだ。信頼のできる取引先に出会う努力をする。村や農業界だけの理屈ではなく、世の中の常識を知るためにもっと他所の人の話を聞くのだ。どちらにしても君自身が村から飛び出なきゃだめだぞ」

僕は何もいうことがなかった。年配の経営者は、青年のいかにも誠実そうな言葉や態度にふれて、そんな彼がボヤキをいいつつ歳をとってしまうのではと感じたのかもしれない。真面目な分だけ村や農協の役を押付けられ、それを背負うだけの存在になるのを惜しいと感じたのだろう。もしかしたら、かつての自分を思い出したのかもしれない。そして、自分の過去を振り返ればこそ、農協や村の中を問題にするのではなく、まず何より自分自身を変えていくことの大事さを伝えたかったのだと思う。

その人自身が村内の小さな名誉に満足して、井の中のカワズ同様な存在であったが、異業種の人と出会うことで変えられたと話す人だからだ。

より高いもの、より優れたものを求めて努力し、その結果として社会的評価を得ていく。何よりも自分自身の納得をつくっていく。本当の競争相手とは自分自身の現在なのであり、競争なんてそのための手段や指標にすぎないのだ。お客さんと、あるいはお客様のためにより高いものを求めていこうという取引先とこそ付き合うべきだというのも、そこにある緊張観の中でこそ、自らの社会的役割を自覚でき、自分の可能性も自ら創り出して行けるものだからだ。

お客様あるいは取引先に裁かれて自らを確認する。であればこそ堂々と自己を主張する。現在を守ることではなく、未来を創り出すためであれば、農業には沢山の支援者がいる。まず、農業経営者自身が、産地名や組織や農家であるなどという前に、個人の名刺でもって農産物需要企業の企業人たちと積極的な交流を求めて行くべきだと思う。彼らこそ厳しい市場社会の中で意欲ある農業経営者たちとともに新しい農産物消費の形を創り出そうと取り組む人達であるからだ。

宣伝になるが、12月16、17日の両日、本誌主催で農業経営者と関連業界関係者による野菜生産流通の変化を語るシンポジウムを開催する。ご参加下さり、語り合おうではないですか。
Posted by 編集部 08:30

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