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ファイナンシャル・プランナー 藤田秀一郎
【プロフィール】千葉エフピー協会組合代表理事。事業オーナー、医師、未亡人、退職者などに実践的な経理・財務・法務・労務コンサルティングを行う。著書に「FPの知恵袋」(BKC)他がある。

藤田さん

第2回 年金は大丈夫?

 農業経営者の方が気になる情報のひとつに年金の問題があります。その中心は「農業者年金」ですが、一口に年金といっても私たちの周りには様々な年金制度があり、法人経営の場合は厚生年金や企業年金を導入している場合もあります。今回は、農業経営者の皆さんに関係が深いと思われるいくつかの年金のチェックポイントと対応策についてお話ししたいと思います。

【年金制度の概要】

 日本の年金制度は、全国民に共通した「基礎年金」に、サラリーマンや公務員を対象とした「被用者年金」が2階部分として上乗せされるというものです。法人経営で社会保険に加入している経営者の方は、さらに各企業が実施する厚生年金基金や税制適格年金などの「企業年金」が乗る3階建ての体系になっています。また、自営業者(農業経営者)の2階部分、3階部分としては、国民年金基金制度があります。

個人年金
国民年金基金  

企業年金
厚生年金基金
適格退職年金
自家年金

 
共済年金
厚生年金保険
国民年金(基礎年金)
自営業 被用者の配偶者 被用者 公務員

【厚生年金】

 厚生年金保険の被保険者は、全ての法人の事業所・事務所、及び5人以上を雇用する事業所・事務所に常時雇用される65歳未満の全ての人で、同時に国民年金の第2号被保険者にもなります。
 保険給付は、年金給付として老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金が、一時金給付として障害手当金と外国人に対する脱退一時金があります。老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格要件を満たしている人に60歳(定額部分については段階的に65歳に引き上げられる)から支給されます。
 給付の財源には、労使が折半で負担する保険料(保険料率は一般の被保険者で17.35%)と、積立金からの運用収入が充てられています。
 厚生年金についてよく聞く悩みは、「保険料負担が重い」「年金受給額が減っていくのではないか?」といったものです。脱退したいと考えている経営者も多いようですが、強制加入なので仕方がないと思い込んでいるのが現状のようです。しかし、逆に審査によって加入したくても加入できないこともあるのですから、脱退することは実は可能です。具体的な方法は個別 事案により様々な対応方法があり紙面では差し控えますが、例えば収入が減少し保険料の負担が不可能になった場合等が該当します。
 表1をご覧下さい。国民健康保険と国民年金に切り替えた場合の負担額が社会保険の半分で済むケースもあります。減額になった分から一部を他の福利厚生費用に回すことも可能です。

表1 社会保険と、国民健康保険・国民年金に切り替えた場合の負担額の比較
給与 社会保険:厚生年金 国民健康保険 国民年金 合計
個人負担 会社負担 現在合計 本人 本人 配偶者 子供 子供 小計 本人 配偶者 小計
所得割 均等割 均等割 均等割 均等割
374,000 63,261 63,261 126,522 34,146 2,195 2,195 2,195 2,195 42,926 13,300 13,300 26,600 69,526
334,800 49,115 49,115 98,230 30,567 2,195 2,195 2,195 2,195 39,347 13,300 13,300 26,600 65,947
415,000 56,870 56,870 113,740 37,890 2,195 2,195 2,195 2,195 46,670 13,300 13,300 26,600 73,270
329,600 52,992 52,992 105,984 30,092 2,195 2,195 2,195 2,195 38,872 13,300 13,300 26,600 65,472
430,000 55,185 55,185 110,370 39,259 2,195 2,195 2,195 2,195 48,039 13,300 13,300 26,600 74,639
329,600 38,775 38,775 77,550 30,092 2,195 2,195 2,195 2,195 38,872 13,300 13,300 26,600 65,472
350,550 48,456 48,456 96,912 32,005 2,195 2,195 2,195 2,195 40,785 13,300 13,300 26,600 67,385
200,000 26,920 26,920 53,840 18,260 2,195 2,195 2,195 2,195 27,040 13,300 13,300 26,600 53,640

 

【国民年金】

 国民年金は、20歳以上60歳未満の全ての人を加入対象とした、日本の公的年金制度の基礎となるものです。被保険者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に区分されています。第2号被保険者は、サラリーマンや公務員等、被用者年金制度の被保険者で、第3号被保険者は、第2号被保険者の被扶養配偶者です。第1号被保険者は第2号被保険者、第3号被保険者以外の被保険者で、自営業者や農家などです。
 給付の種類は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の他、第1号被保険者だけを対象とした付加年金、寡婦年金、死亡一時金等があります。老齢基礎年金は、公的年金の基礎となる給付で、原則として25年以上の保険料納付要件を満たした者に65歳から給付されます。
 給付の財源には、第1号被保険者が納付する保険料(月額13300円)、厚生年金制度、共済年金制度からの基礎年金拠出金、国庫負担及び積立金からの運用収入が充てられ、第2号被保険者、第3号被保険者は、基礎年金拠出金による拠出となるので、直接国民年金に保険料を納付することはありません。
 この国民年金の上乗せ部分に国民年金基金があり、農業者年金もその一つです。「受給者の年金3割カット、46歳以下は掛け損」なるものがマスコミで報道され、危機感を抱く加入者を多く見受けますが、解約するかどうかは冷静に判断すべきです。考え方の一例として、現在解約すれば、積み立て額の30%が削減され払い戻されるとします。この30%を他の積み立てで穴埋めできれば解約も良しと判断できるわけです。具体的に分析しますと、100万円積み立てた分が30%(30万円)削除され70万円払い戻されたとします。この70万円を原資にして100万円以上にできないかということです。45歳の人が60歳まで運用する場合、
削減された30万円÷70万円(原資)÷15年=2.86%
となり、単利運用で年2.85%の積み立て商品を見つけてくれば回収が可能ということになります。この積み立て商品はある外資系保険会社に存在します。しかし、一概に既存契約の解約が不利とは言えません。現在解約したらいくら戻ってくるかを確認のうえ、解約金を基に他の制度への加入や私的年金への移行を提案します。そのためにはライフプランを基本として、表2のキャッシュフロー表を作成し、将来的な収支の推移を把握したうえで、繰上げ支給や繰り下げ支給も合わせて考えていくべきです。

表1 キャッシュフロー表
年度 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
年齢 ご主人 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70
奥様 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65
長男 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40
長女 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38
次男 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
次女 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
収入 給与                      
年金                      
年金                      
退職金                      
パート                      
年金                      
<収入合計                      
収支                      
下記支出合計                      
支出 生活費                      
住居                      
                     
                     
                     
教育                      
教育                      
教育                      
保険料                      
                       
                       
                       
                       
                       
                       



【私的年金】

 個人が自分の責任と計画に基づき老後の所得保障の準備をする年金で、生命保険会社等の個人年金保険などがこれに該当しますが、最近の生保の破綻問題は本当に懸念材料です。格付けが下の方の会社だとなおさらだと思います。万が一保険会社が倒産した場合にはそこで加入している契約はある程度は保護されますが、完璧な内容で元のままというわけにはいきません。

破綻例(削減割合)
経過年数 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
定額保険 100% 100 100 100 100 100 100 100 100 -
定期付き終身保険全期型 100 97 97 89 88 87 87 95 95 94
定期付き終身保険10年更新型 100 94 993 82 78 75 71 73 65 -
医療保険 100 98 98 95 94 94 94 95 94 94
養老保険 100 89 90 86 84 87 90 92 96 -
10年保証付終身年金 100 76 76 59 49 49 49 50 51 51
10年確定年金 100 79 79 64 55 55 55 56 57 57

【1999年に破綻した生保会社の例】

  • 終身保険3000万円→1415万円
  • 災害特約3000万円→1415万円
  • 傷害特約1000万円→171万円
  • 手術特約 100万円→47万円
  • 入院特約 5000円→2000円

 上の破綻例から推測すると、契約の40%前後(経過年数にもよりますが)が保護されるだけと考えておいた方がよさそうです。これは倒産した保険会社を引き受ける保険会社の余力等によっても違ってきますが、結果 的には次のような結論となります。

  1. 加入している生保の体力や財務力を定期的に見直す。
  2. 加入生保は数社に分散させる(リスク分散)。

 解約するかどうかは自己責任です。万が一破綻した場合、積み立てたお金の全額回収は無理です。また中途解約の場合、今まで払った分の全額は戻ってきません。仮に今解約した場合に戻ってくる金額を計算してもらい、その金額で納得したらその時点で解約すればよいと思います。


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