| 編集長コラム | ||
高橋がなり氏のこと | 農業経営者 9月号 | (2006/09/01)
「高橋がなり」といっても、ご存じない方も多いだろう。1995年に自ら設立したアダルトビデオ製作会社ソフト・オン・デマンドを100億円企業に育て上げ、AV業界を「産業化」した、と言うべき人物である。そのがなり氏が、自らの人生の甲斐を求めるかのように農業に取り組もうとしている。
がなり氏には失礼だが、つい先日まで存じ上げなかった。知ろうとしなかったと言う方が正確だ。
実は、本誌スタッフには以前から同氏の取材を提案されていた。アダルトビデオ製作をきっかけに事業的成功を収めただけでなく、テレビやウェブ上で若者の支持を受けている同氏が、突如、農業に取り組むと宣言し、その世界から退場したという報告とともに。
しかし、満足にそれに取り合わなかった。どうせ、遊びだろ、と。それ以上に、「アダルトビデオ屋」という先入観から、真っ当に見ようとしなかったわけだ。
日頃、農家や農業関係者を含めて、人々が持つ農業への先入観から自由になること、囚われた思考に支配されることのバカバカしさを語っているつもりなのに、自らがその落とし穴にはまってしまった(そもそも、僕だって旅先でホテルに泊まればお世話になっているじゃないか……)。
そんな人物が農業に思い入れしているというのなら、「面白いぞ!取材してこい」というのが本誌のはずではないか。まったくもうろくしたものだ。
同氏のブログ「虎の声」を見るとよい。僕自身のテーマでもある、人や社会が本来のあたりまえさを取り戻すことの肝心さ、これを若い人々に向けてストレートに、すばらしい表現力でもって伝えている。それに感激する若者があり、であればこそ彼らのカリスマにまでなった。
僕の偏見のために、こんな健康な精神や生きる元気を伝える言葉に出会う機会を逸していた。
がなり氏は、その斬新な企画力でAV製作会社としてファンをつかみ、さらにレンタルが主体であったAV業界に低価格のセルビデオの販売と流通システムを確立した。それをきっかけに、さらにソフト配信の多様化に取り組み、事業を発展させていった。
そうした事業戦略の前提をがなり氏は考えた。AV業界の人間は、作る人間も売る人間も自分のことばかりを考え、お客様の満足というものを考えていない、と。だから、社名はソフト・オン・デマンド(on demand=要望に合わせて)なのだ。
僕は「農業は食べる者のためにある」などと言ってきたが、がなり氏ならもっと巧いフレーズでそれを語り事業として実現していくだろう。
同氏の活動に注目し、僕もできるだけのお手伝いをしようと思う。
同氏は「まず自分も百姓の仲間に入れて貰いたい」と話す。
こんな人を農業の仲間に引き入れたら、面白い時代が始まりそうだ。














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