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農業技術 | 大規模輪作営農のための乾田直播技術

2008年の収量および品質 盛川農場での実証試験 | 農業経営者 1月号 |  (2009/01/01)

稲作経営を抜本から変える革新技術として注目される乾田直播。海外マーケットへの進出の鍵さえも握るこの技術は、稲作経営に携る者にとって、無視できない存在になりつつある。試験場での研究のみならず、現場の農業経営者と一体となって技術開発に取り組む東北農業研究センターの大谷隆二氏が、実践的な乾田直播技術をシリーズでお伝えする。

倒伏に強かった乾田直播圃場のイネ


乾田直播のイネは、代かきをしないため「秋まさり型」の生育となり、登熟期においても減水深が適度に維持され、根の活性も高い。このような要因によって、適切な管理をした乾田直播では、粒張りの良い品質の高いコメを生産することができる。また、一般に落水時期が早いほど収量が減り、不完全米も増えるが、乾田直播は排水性が良く地耐力が高いため、コンバイン収穫のために落水時期をとくに早める必要がない。
盛川農場の乾田直播のイネは、これまで報告してきたように5枚のすべての圃場で順調に生育したが、収穫するまでは油断できなかった。2008年は台風の上陸がなかったにも関わらず、周りの移植栽培で完全倒伏する圃場が多々見られたからである。移植栽培で今年倒伏が多発した要因は、今後の詳細な報告を待ちたいが、盛川農場の乾田直播では、最終的に収穫作業や収量・品質に影響する倒伏はなかった。
写真1は収穫前の「ひとめぼれ」であり、隣接する移植圃場は部分的に倒伏している。この現象を見て盛川氏は「乾田直播は倒伏にも強い」という印象を持たれたようである。倒伏は、収穫間際に葉が枯れ上がり秋落ちして起こる場合も多く、秋まさり型で稲体の活力が高い乾田直播は、倒伏にも強い傾向がうかがえる。

「萌えみのり」は全刈りで10俵以上


稲刈り作業は、籾の黄化程度が90%(黄白+黄色)となった10月9日から開始した。収穫作業には、今年度盛川農場が新たに中古で導入した6条自脱コンバイン(98PS)を用いた。当農場のコンバイン収穫では、写真2に示す通り外周を4周刈った後に中割りし、その後は圃場長辺方向のみ収穫し、圃場短辺方向は旋回スペースにして作業の高能率化を図っている。収穫作業の平均速度は4.5km/h、作業能率は1haあたり2.5時間であった。また、乾田直播圃場は前述した通り、排水が良好で地耐力が高いため、コンバイン走行が容易となり、いずれの圃場もクローラの轍が皆無であった。

(以下つづく)

大谷隆二(おおたに りゅうじ)
1961年山口県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。北海道農業試験場で『草地飼料作および水稲作の機械化に関する研究』、農業研究センターで『水稲の低コスト栽培および乾燥調製に関する研究』に従事。1997年岡山大学より学位授与(農学博士)され、1998年に『無代かき直播栽培に関する研究』で農業機械学会技術奨励賞受賞。その後、農林水産省大臣官房で技術調整に関する業務に従事し、2003年に東北農業研究センターに異動。東北水田輪作研究チーム 上席研究員。著書に『北の国の直播』(共著)がある。
※記事全文は農業経営者01月号で
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農業技術 | 大規模輪作営農のための乾田直播技術

除草対策と肥培管理 盛川農場での実証試験 | 農業経営者 12月号 |  (2008/12/01)

稲作経営を抜本から変える革新技術として注目される乾田直播。海外マーケットへの進出の鍵さえも握るこの技術は、稲作経営に携る者にとって、無視できない存在になりつつある。試験場での研究のみならず、現場の農業経営者と一体となって技術開発に取り組む東北農業研究センターの大谷隆二氏が、実践的な乾田直播技術をシリーズでお伝えする。

無代かき栽培に対応した管理技術が必要


乾田直播の雑草対策および肥培管理は、代かきを行なわないため、湛水直播などの代かきする栽培法とは異なった対応が必要である。

寒冷地の乾田直播では、出芽までの畑期間が長くなるため雑草の発生量が多めとなり、防除回数も増加する傾向がある。また、イネの出芽時にはノビエの葉齢はイネに対して2〜3葉進んでいることが多い。このため、現在登録のある一発処理剤だけで十分な防除効果を得ることは難しく、ノビエ5葉期まで効果のある茎葉処理剤を組み合わせた体系防除が必要となる。

肥培管理では、代かきをしないため基肥に施用した窒素肥料は脱窒・流亡しやすく、従来の施肥体系では窒素吸収量が不足する。そのため、深耕や堆肥投入などの「土作り」が重要であるが、現実には十分な堆肥投入は難しい状況にあり、その代替技術として緩行性肥料の活用がある。さらに、代かき栽培法に比べ、地力窒素の発現が遅れるため、寒冷地では初期生育確保の上から、苗立ち数に応じた初期の肥培管理が重要である。

(以下つづく)

大谷隆二(おおたに りゅうじ)
1961年山口県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。北海道農業試験場で『草地飼料作および水稲作の機械化に関する研究』、農業研究センターで『水稲の低コスト栽培および乾燥調製に関する研究』に従事。1997年岡山大学より学位授与(農学博士)され、1998年に『無代かき直播栽培に関する研究』で農業機械学会技術奨励賞受賞。その後、農林水産省大臣官房で技術調整に関する業務に従事し、2003年に東北農業研究センターに異動。東北水田輪作研究チーム 上席研究員。著書に『北の国の直播』(共著)がある。
※記事全文は農業経営者12月号で
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グレーンドリルを用いた播種体系【盛川農場における実際編】 | 農業経営者 10月号 |  (2008/10/01)

稲作経営を抜本から変える革新技術として注目される乾田直播。海外マーケットへの進出の鍵さえも握るこの技術は、稲作経営に携る者にとって、無視できない存在になりつつある。試験場での研究のみならず、現場の農業経営者と一体となって技術開発に取り組む東北農業研究センターの大谷隆二氏が、実践的な乾田直播技術をシリーズでお伝えする。

盛川農場の直播導入の端緒


第1回では、グレーンドリルを用いた播種体系について、東北農業研究センターの所内圃場での試験データを用いて基本事項を解説した。第2回は、岩手県花巻市の盛川農場(盛川周祐代表)での実際編を述べる。

盛川農場の経営面積は約50haであり、水稲10・7ha、小麦21・4ha、大豆14・2haのほか、最近はジャガイモの導入を進めており、2008年には2・3haに拡大している。盛川農場の技術の特徴は、第一に、プラウ耕による深耕や積極的な堆肥施用による土作りへのこだわりである。第二に、高性能な機械の導入による徹底した高能率化であり、導入した機械の日常的なメンテナンスや部品交換は自分で行なっている。また、近年では、レーザー均平機を用いて30a前後の圃場区画を合筆し、自前で大区画化を進め、作業の効率化を図っている。

盛川氏の直播栽培への取り組みは、大冷害の翌年、94年の減反緩和を契機とした湛水直播の導入がスタートである。乾田直播については、スガノ農機のバーチカルハローシーダを用いた体系で05年から取り組んでおり、これには「東北土を考える会」の活動の役割が大きい。また、秋田県大潟村で乾田直播に10年以上の実績のある矢久保英吾氏の影響も見逃せない。

グレーンドリルを用いた体系は、盛川氏が筆者の研究室を訪ねてこられた07年から、現地実証試験という形で始まった。盛川農場では、麦の播種にグレーンドリルとカルチパッカを20年近く使用しており、「畑作の感覚でコメを作ろう」という盛川氏の考えからもグレーンドリルの利用は、自然な流れであったと考えられる。また、盛川氏来室のタイミングは、コスト半減を目指した農水省のプロジェクト研究「担い手プロ」が始まろうとしていたときであり、まさに幸運であった。

(以下つづく)

大谷隆二(おおたに りゅうじ)
1961年山口県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。北海道農業試験場で『草地飼料作および水稲作の機械化に関する研究』、農業研究センターで『水稲の低コスト栽培および乾燥調製に関する研究』に従事。1997年岡山大学より学位授与(農学博士)され、1998年に『無代かき直播栽培に関する研究』で農業機械学会技術奨励賞受賞。その後、農林水産省大臣官房で技術調整に関する業務に従事し、2003年に東北農業研究センターに異動。東北水田輪作研究チーム 上席研究員。著書に『北の国の直播』(共著)がある。
※記事全文は農業経営者10月号で
Posted by 編集部 | 12:29 | この記事のURL | コメント(377) | トラックバック(0)