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編集長コラム

「表示」の嘘、「商売」の嘘、「正義」の嘘、その退廃の果てに | 農業経営者 3月号 |  (2002/03/01)

【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
「雪印食品事件」以後、食品流通業界の“嘘”が一気に白日の下に晒され始めた。

その後の経過を見るとき、これは我が国の食品の生産・流通・小売りにおける“信用恐慌”とでも言うべき事態に発展するのではないかと本誌は恐れている。それは我が国の農業と食の業界を大変革させるために避けては通れぬ時代の波ではあるが。今年度末に囁かれる様々な金融不安、4月に始まるペイオフ、それらが経済恐慌どころか日本社会そのものを恐慌に導くことにもなりかねないからだ。

発端は雪印食品⑭関東ミートセンターによる「牛肉詰め替え」の露見だった。“狂牛病騒ぎ”で売れ残る未検査国産肉の対策として設けられた買い取り制度を悪用し、補助金を騙し取ろうとした詐欺事件である。その後、牛肉の販売についての産地やブランド詐称(表示の嘘)が告発されるのに次いで、いよいよ海外産農産物の産地詐称やリパックの横行も報道されるようになった(マスコミも知りながらこれまで報道してこなかった)。
一方では、スーパーでの米や野菜の安売りが減り、低迷する野菜市況にも上向きの条件をもたらすかもしれない。まともな直売所や農家からの産直には今以上に人気が集まることもあるだろう。しかし、農業経営者もまた少なからずの影響を受けることは避けられないのだ。真価を問われるのはその後だからである。

「ほら見ろ、悪いのは商売人であり、そのために真面目な農民や農業界がひどい目に合ってきた」と言う人々がいるかもしれない。たしかに、あくどい商売人や詐欺師も世の中にはいる。大きなバイイングパワーを背景に横暴を極める農産物需要企業も存在するのも事実だ。そのために、歯軋りをしてきた農業経営者や卸業者もいることを知っている。

そして、現在の状況、様々に露見しつつある卸業者による産地や原料表示の“嘘”の横行には、社会的影響度が高く、最終の“売る責任”を背負う大規模スーパーや外食業者が原因を作り出しているという側面が強い。大規模スーパーが卸業者に対して価格要求だけで品揃えを求める結果、産地表示を偽る卸業者が出てくるのも想像のつくことだからだ。それどころか、閉店後に、その日に高い値を付けて売れ残った○○産の「有機野菜」を翌日リパックして××産の野菜に化けさせるべくパートのオバサンたちを働かせたことは無い、と断言できるスーパーの店長はどれだけいるだろうか。慌てて雪印製品を棚から外してみせるスーパーのあざとさとは、彼等の商売としての退廃をこそ示しているのだ。

しかし、読者諸氏が自らの周りを見回したとき、一人ひとりの農家を含めて農業界が「我は潔白」などと言うほど綺麗な存在であると言えるだろうか。農業界もまたその信用恐慌を引き起こす責任の一端を背負っていると僕は考える。これまでの農業界や農民もまた、被害者や弱者の顔をしながら、顧客や自らを欺いてきたのである。

我々は制度や法律の不備や悪徳業者の存在に、消費者の信用不安の原因を探すだけでは足りないのだ。農業界を含めたあらゆる経営あるいは職業としての倫理の破綻にそれは由来していると言うべきなのである。

今、進行している事件とは、「有機表示」や「産地表示」の”義務化”が、逆に現在の“表示の嘘”を横行させ、この信用恐慌を生じさせかねぬ状況を作っている。“嘘”の横行を規制するための制度や法律が新たな“嘘の横行”の原因を作っているのである。産地表示が義務付けられた後にこそ野菜のリパックが増えていることを読者は知っているはずだ。規制があるからヤミは美味しく、規制があるからヤミ屋も横行するのである。規制の強化を図ることや、求められるルールや規制に従うという従順さだけでことは解決しないのである。全ての企業や業界が自らの経営の永続性のためにこそ、その“経営倫理”を問うべき時代なのである。

そして、すでにスーパーが米卸に求めて作って来た特売の安値米の横行は、苦し紛れの卸が調製した低品質米の横行によって、結局スーパーの米販売量の激減という結果を生じさせているのである。農家の産直が増えたからスーパーで米が売れない訳ではない。安値競争の行き着くところで店がお客様に見捨てられたのだと言うべきなのである。

土や自然を欺くことが出来ないごとく、市場社会や顧客は騙せないのである。土作りを怠って来た者が天候不良年にうろたえるごとく、顧客を裏切るものは顧客に裁かれるのだ。

同時に、もう我々は、部分の合理性だけを考え全体性を見つめる者のいない、これまでの分業社会を超える新しい論理を必要としているのだ。農家は種蒔きロボットに過ぎず、トラックか倉庫に過ぎぬ流通業者、自動販売機か単なる陳列棚に過ぎないスーパー、自動キッチンに過ぎないかのような外食産業。そして、それぞれの企業・業界人は蛸壺にはまったまま、目先の「営業」は考えても「経営」を考えない。食べる人々への共同の責務を自覚しようとしない。それが、この信用恐慌の根本原因なのである。そろそろ、食べる人々への共同の責務を持つ食と農にかかわる異業種が未来への目線を揃えて理念と技術知識を共有するための円卓に付き、消費者の信頼を改めて積み上げていく努力をするべき時代なのである。そして、それをなすものが強いからではなく必要とされるから未来の舞台を与えられるのである。
Posted by 編集部 08:30

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