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提言 | 視点

アンシャン・レジームは壊せるか | 農業経営者 10月号 | (2005/10/01)

【政策研究大学院大学教授規制改革・民間開放推進会議専門委員 福井秀夫】
view0510.jpg 規制改革の遅れた産業分野として、医療・福祉、教育、農業が挙げられる。中でも農業は群を抜いている。消費者や意欲ある農業者の眼から見ると、自由で公正な競争を阻害する要素がかなり多いが、それについての議論さえタブーとされる。まさにアンシャン・レジーム(旧体制)といった感がある。

気概なき農水官僚たち



農水省の良識派には、農政の目的が農家の所得保証や、補助金や土地利権にすがる「自称農家」の延命でないことはわかっている。だからテーマと時機により「改革」と言ってみたりもするが、利害当事者が騒ぐと、その旗をすぐ降ろす。真の雇用者たる国民を意識した独立心や組織的気概が不十分だ。
彼らは、保護行政の受益者に気を使うわりに、創意工夫に富んだ事業的農業者の支援には気乗り薄だ。株式会社の参入に対しては、宗教的信念に近い敵意を示す。農地の転用規制には不熱心で、結局は既得権の上に立つ古いシステムを残そうとする。一般消費者の利益はどこにいってしまったのか。

言うまでもなく、農政の本来の目的は高品質で、おいしくて安全な農産物が、多様な選択肢の中から消費者に届く仕組みを作ること。高付加価値の製品を効率的に提供できる農業者が、きちんと利益を上げられる環境を整えることだ。

しかし、農政関係者たちは、そもそも農政はどんな原理原則にのっとり、誰のために行うのかという議論を意図的に避けてきた。官僚は天下り先の確保と引き替えに「業界」に媚を売り、「業界」の政策への影響力は肥大化する。そして、特に組織化された一部の農業生産関係者が、消費者の利益を離れてロビー活動を展開してきた。

この構図を突き詰めると、選挙制度の問題に行き当たる。都市と地方の大きな一票の格差が、組織的に結集されやすい比較的少数の生産者の利害を、薄く広がった多数の消費者の利害よりも過大に反映させるバイアスを生んでいる。

事業的農家が自ら立つ時



今回の総選挙の結果は、構造改革の行方を左右すると言われてきたが、農業改革の先行きはまだ見えない。郵政民営化が進んでも、農政改革が同様に進展するとは限らない。与野党を問わず、政治家には農業がデリケートな領域だという畏怖心が根強い。改革が逆方向に押し戻される可能性もある。

今後の展開は、現在の歪んだ状況に消費者が目覚めるか、あるいは、事業的農家が公明正大な競争環境を求めて、意思を政治的に結集できるかにもかかっている。

構造的な圧力や、制度上の隘路、ビジネスとしての農業を縛る枠を取り除くには、心ある農業者が団結し、自ら声を上げることも必要だと思う。
(インタビュー・まとめ 秋山基)
福井秀夫(ふくい ひでお)
三重県出身。81年東大法学部卒業後、建設省入省。法政大教授、ミネソタ大政治学科客員研究員などを経て現職。専門は行政法、法と経済学。工学博士。著書『官の詭弁学』では、規制緩和を巡る省庁とのやりとりから、官の非論理や事実認識の矛盾点を突く。
Posted by 編集部 11:30

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