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農業技術 | “Made by Japanese”による南米でのコメ作り

ウルグアイでコメ作り(3)
日本人農業経営者のコメ作りへの感性 | 農業経営者 4月号 | (2006/04/01)

さて、ここからがウルグアイのコメ農場の訪問記である。

日本の裏側で日本米を作る人



我々一行は、成田からサンフランシスコを経て、時差調整を兼ねてカリフォルニアの稲作地帯を巡ってサクラメントに一泊した。翌朝、サクラメント空港から国内便でワシントンDCへ。この時期の東行きの飛行時間は約8時間もかかる。ワシントンDCから夜の国際便に乗り換え、アルゼンチンのブエノスアイレスを経てウルグアイの首都モンテヴィデオに着いたのは翌日の午後2時。地球を半周、時差12時間、日本の真裏のウルグアイは本当に遠い。
空港で我々を迎えてくれたのは田村繁直さん(31歳)。広島にある造船会社がオーナーの日系農場・アグリダイアモンド社の副社長兼現地マネージャーである。田村さんは鹿児島県の出身で、広島大学で畜産学を専攻し、卒業と同時に同農場の牧童として一年間研修。その後、本社採用として同社の牧畜部門を担当、さらに現在は、2003年7月に設立されたAgridiamond社の副社長で同農場の現地マネージャーである。

ウルグアイ人の奥さん(Julinana Martinezさん)と結婚し、子供が二人。すでに日本語を忘れ始めていると笑うほどウルグアイに馴染んでいる人。

モンテヴィデオ(Montevideo)から、さらに、我々の目指すアグリダイアモンド社農場のあるラ・コロニーラ(La Coronilla)までは、車で約4時間。民間企業の所有であるという国道9号線を東北東に約300km走った、ブラジル国境に近い大西洋岸の地域である。

かつては有名な保養地の一つだったというラ・コロニーラ。夏の間だけ経営するというホテルが我々の宿だ。日本の旅行会社では観光客には勧められないと言ったが、さびれてはいても、太平洋に面したコロニアル風の小さなホテルは、むしろ趣がある。ホテルで飼っている馬や牛が周りをうろついているのも、いかにもウルグアイ風で嬉しくなる。

ウルグアイという国



北をブラジル、南東が大西洋、西側をラ・プラタ川を境にアルゼンチンに挟まれたウルグアイの国土面積は日本の約半分の17万平方km。ほぼ平坦な国土で、南緯30~35度、西経55度前後と、南半球ではあるが日本と同程度の緯度にあり、高温期である1月、2月の平均気温が22℃。最寒月の6月の平均気温が10℃。雨は夏に少なく冬に多目であるが、年間を通して降り、年間雨量は平均890aの乾性半湿潤地帯だ。

人種的には殆どがスペインおよびイタリア系で人口は320万人。インディオ系はいない。日系人は500人程度の在留日本人がいる程度。人口の約半分は首都のモンテヴィデオ市に住み、その他もモンテヴィデオ県に集中している。

一人当たりGNI(国民総所得)は、3950ドル(2004年・世銀、日本→3万4510ドル)と貧しい。畜産物やコメの輸出の他、南米で唯一の治安の良い国として、南米各国およびスペインを中心としたヨーロッパからの観光、それに、経済格差を利用して老後を暮らすスペインの年金生活者の落とすお金も同国の重要な収入源になっているようだ。

それだけに、農業労働者の賃金も月200ドル程度だという。北部の農業地域であるラ・コロニーラにあるアグリダイアモンド社は、管理部門に6名、畜産部門15名、稲作部門17名、精米・乾燥調製部門7名の計45名が勤める、同地での数少ない働き場所なのである。

農業は、南部のラプラタ川沿いのエリアが中心であるが、我々が訪ねたラ・コロニーラを含め、稲作はブラジル寄りの北部地域を中心に行なわれている。湿原が広がる同地方では、数万ha単位の大農場で、牛、羊の放牧とインディカ種の水稲とが輪作される。水は豊富であり、農場は自ら大規模な用水路を造成する。水稲は乾田直播され、牛、羊などの肉類や畜産品とともにコメは同国の主要輸出品目のひとつ。しかし、近年はタイ産のコメに押されて減産傾向にある。

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田村さん(右端)とウルグアイ人技術者たち

日本品種生産の現状



我々が訪問したアグリダイアモンド社の農場では、あきたこまちを乾田直播で約700haに作付けする。しかし、その収量レベルは乾籾収量で3t/haに過ぎない。玄米ベースにしたら多く見積もっても2.1t/ha(210kg/10a)だ。田牧氏は同農場に技術指導を求められているのだ。

アグリダイアモンド社の総耕地面積1万7000ha。そこで5500頭の牛、1000頭の羊、馬120頭を放牧して、同社の経営は成立させているが、日本品種に取り組む稲作部門が同農場の経営を圧迫している。
同農場での2005年の水稲作付面積は700ha。

田村さんによれば、haあたりの圃場段階での生産コストの合計は概算で約1000ドル。乾籾収量が3t/haという現在のレベルで、乾燥調製までのトンあたりコストは333ドル。精米費用を含めた白米ベース(最終商品化段階)だとトンあたりで約510ドル。

田村さんの試算によれば、乾燥調製段階でのコストは収量4トンで250ドル、5トンになれば200ドルまで下がる。現在の品質での平均販売価格はブラジル市場向けで、約500ドル。収量が乾籾で5t/haになれば利益が出るというのが田村さんの期待なのだ。

乾籾で5t/haといえば、玄米で350kg/10a。それ程高いハードルではない。その低収量の原因を田牧さんは、インディカ種の稲の栽培基準にこだわり、日本品種の特性を無視した、ウルグアイ人生産担当者の栽培技術と機械化レベルにあるという。何よりも圃場均平の悪さ、そして選別の悪い種子を10aに15~18kgも播いていることを改善するだけでも収量は一気に上がるはず。すでに、田牧さんは試験圃でそれは示しているのだが、経験にこだわる現地の人は技術を変えようとはしない。人はどこでも経験から自由になれないのだ。

必要なのは、機械技術として均平作業機、日本品種を収穫するためのロスの少ないコンバイン、高品質な乾燥調製と精米のための日本製の機械。そして何より、日本人農業者のコメ作りへの感性なのだ。我々日本人にとってもまだ経験の少ない乾田直播である。だとしても、カリフォルニアでもウルグアイでも、彼の地の人々は日本品種栽培への感性を持てないでいる。そこにこそ、コメによるMade by Japanese のチャンスがあるとは思わないか?

ウルグアイの稲作地帯は、水が豊富で、播種さへ適切に行なえば発芽は安定する。畦の隣りに水が入ってくるような条件で乾田直播に取り組む日本の農業経営者たちよりはるかに恵まれている。広大な耕地、安い労働力、一部の機械・施設は持ち込むにしても、基本的には現地農場のものを借りる。海外第二農場設立に向けて、海を越えた経営実験に取り組もう、と本誌は読者に呼びかけるのである。 (つづく)
Posted by 編集部 10:30

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