執筆者一覧

農業ビジネス
農業経営者twitter
デジタル見本誌

アーカイブ
2020
04
2019
12 11 09 08 06 04 03 02
2018
12 10 08 07 04
2017
12 10 08 06 05 03 02 01
2016
12 11 10 07 06 04 03 02
2015
12 11 10 09 08 07 06 04 03 02
2014
12 11 10 09 07 06 05 03 02 01
2013
12 11 10 09 08 07 06 04 02
2012
12 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2011
12 09 08 07 06 05 04 03 02
2010
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2009
12 11 10 09 07 06 05 04 03 02 01
2008
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2007
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 01
2006
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2005
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2004
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2003
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2002
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2001
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
2000
12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01
1999
12 11 10 09 08 07 06 05 04 02 01
1998
12 11 10 09 08 07 06 04 02
1997
12 10 08 06 04 02
1996
12 10 08 06 04 02
1995
12 10 08 06 04 03
1994
12 09 06 03 01
1993
10 07 05
文字のサイズ
中
大

HOME > 提言  > 視点  >先入観で変えられる味...

提言 | 視点

先入観で変えられる味覚 | 農業経営者 1月号 |  (2008/01/01)

【神戸松蔭女子学院大学 人間科学部 生活学科 准教授 坂井信之】
視点 安全性や品質など、食品にプラスアルファを求める今日において、消費者はどんなものをおいしいと感じるのか。その研究課題に関して、私はある実験を行なった。被験者に各メーカーの日本茶飲料のCMを視聴させた後、実際にお茶を飲ませて感想を尋ねるという実験である。「このお茶は風味がある」など、最も高い評価は老舗をモチーフに「和」を強調した商品のCMを見た後に集中した。一方、野生的なイメージの男性タレントが出演するCMは、お茶に対して「苦味が強い」といった意見をもたらした。しかしながら、実はどのお茶も中身は同一の商品であり、味が変わるはずもない。この実験結果は何を意味するか。

本来の味と異なる“味覚”



人間は先入観を与えられて“期待”が生まれると、その期待に自ら合わせようとする心理が働き、知覚機能に影響を及ぼすのである。においでも「甘い」と先に言われたら甘く感じようとするし、「酸っぱい」と言われたら酸っぱくなる。最初のインパクトの与え方で、受け取り方は変わる。

脳内において味覚情報は、眉の奥にある眼窩前頭皮質から視床下部を通じて処理されるというのが定説だが、詳細はまだ明らかになっていない。ただしメカニズムとしては、長期間記憶を残す場合、そのままだとデータ量が多いので言葉に置き換えられる。つまり記憶は言語でしか保存されない。したがって、与えられる言葉次第で、味覚は大きく変わってくる。舌や鼻で感じている本来の味とは相違が出てきてしまうのである。

その他、影響を与える心理作用として、ハロー・エフェクト(光背効果)も挙げられる。実際は専門家ではなくても白衣を着た人物が「体にいい」とコメントすると、そのように思い込んでしまう心理作用だ。日本では人の話に意見して議論するほうが失礼にあたるし、一を聞いて十を知ろうとする文化がある。先入観にとらわれやすい土壌はあるかもしれない。

期待を抱かせる農業に



こうした味覚と心理作用の分析結果については、米国、中でも携帯食市場に強い軍隊が膨大な情報を持っていると言われている。最近、約10年前のデータも徐々に開示され始めた。今後、農業経営者も研究する価値があるはずだ。

なお、先述の実験で茶摘みのシーンを含むCMを見せても、その印象は好意的な心理作用をもたらさなかった。消費者は、農業現場のリアリティーを必要としていないのだ。こういった意識面でのギャップを埋める消費者教育は必要になるだろう。しかし、最も効果的な方法は、農業そのものの期待値を上げさせる商品、あるいはキーマンが登場すること以外にないように思う。
(まとめ 鈴木工)
坂井信之(さかい のぶゆき)
1969年福岡県出身。98年、大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員(広島修道大学)、科学技術特別研究員(産業技術総合研究所)などを経て2005年4月から現職。研究分野は食品や香粧品の受容と選択を中心とする日常生活に関する行動科学。共著に『食べることの心理学』(有斐閣)などがある。
Posted by 編集部 11:30

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする