夏も始まりの頃になると、農協の総代会資料が各地の仲間から届く。3月期決算の報告が内容だ。
その中で目を引いたのは友人のSさんが送ってきた熊本・鹿本農協の総代会資料。彼はここの熱心な組合員だ。この農協のことは以前、ハウスのリース事業を展開して、多くの農家を経営破綻に追い込んだと、このコラムでもレポートしたことがある。最近は、それが原因で農家を相手に借金取り立て訴訟を連発。地元では何かと話題に事欠かない、その筋ではつとに有名な農協である。
まず総代会資料をご覧いただきたい。そんな農協でも、そこそこ利益を出していて経営上、何の問題もないように見える。それどころか自己資本比率の数字を見れば、三菱東京UFJ銀行も足元に及ばないような「超優良」の折り紙がつく立派な金融機関にも見えてくる。
資料に目を通して、思わず疑ったのは、「単体自己資本比率」が異常に高い数字であることだ。この数字は、金融機関の健全性を判断する上で重要な指標。少し聞き慣れない専門用語だが、ざっくりと言えば、従来の「自己資本比率」のことで、平成18年度からこのような名称になった。「単体」という表現を使い始めたが、これは「連結」に対する用語と思えばよい。つまり農協「単体」の自己資本比率ということと理解していただきたい。(以下つづく)